ゴム砥石に関する技術情報
ここでは特に業務使用における、ゴム砥石特有の注意点、トラブルシューティングをご紹介します。
ゴム砥石の保管
直射日光(特に紫外線)、高温、多湿、放射線を避けて、室内で保管してください。
これらによりゴムボンドが変質し、使用感の変化、研削・研磨性能が低下する可能性があります。
蛍光灯の近く、窓の近くなど、ゴム砥石に直接光が照射される場所は避けて下さい。紫外線によりゴムボンドが劣化する可能性があります。
砥石に荷が掛からない様ご注意下さい。砥石に荷重がかかった状態で放置すると、砥石が変形したり、軸が曲がり、回転バランスが狂う事があります。ゴム砥石使用後、長時間放置する場合は機器から砥石を外し、研削液や油分が付着している場合は拭き取り、乾燥させて保管して下さい。
砥石の使用期限
品質保証期限は製造・出荷から3年間です。
しかし、保管状態が悪い場合、期限内であっても砥石が劣化し、本来の性能が発揮できない場合があります。
ゴム砥石の耐熱温度
ゴムは極端な高温、低温に弱く、砥石全体が継続的に加熱・冷却される状況は避けて下さい。
使用環境、保管環境は室温・常温を推奨します。
継続した長時間の高温(おおむね80℃以上)はゴムボンドを変質・硬化させる為、砥石から弾性が失われます。
局所的な高温(砥石と加工物の接触面など)は問題ありませんが、ゴム砥石全体が100~120℃以上に加熱された場合、数分~十数分で相当に変質が進行します。
ゴムボンドが硬化してしまい、砥石の弾性が失われる為、消耗の加速や、荷重に抗しきれず破損する可能性があります。
高温環境下での使用、継続した長時間の高温が予測される場合、作業中に適時冷却したり、クーラントの使用をご検討下さい。
またマイナス30度以下の低温でもゴムボンドが脆化(ぜいか)し、ゴム弾性が失われます。脆く消耗し易くなり、折れやすい等の危険が高まります。
高温・低温の度合いが大きくなればなるほど、変質・劣化の進行は早まります。
また上記の高温・低温に長時間暴露し、変質・硬化してしまったゴム砥石は常温に戻しても当初の性能を発揮しません。
使用時の注意
熱伝導率がおおむね30~40W/(m・K)を下回る素材を加工する場合、摩擦熱が蓄積し易く、加工物の焼けが発生し易くなる傾向があります。
ダイテックジャパンのゴム砥石は、発熱が少なく、焼けが発生しにくいツールですが、力を加え続けたり、一点を集中して長時間加工するなどすると焼け、焦げが発生する事があります。
また、ゴム砥石も加熱により劣化や焼損する可能性があります。無理に加工せず、適時冷却、回転速度を下げる、クーラントの使用等を検討して下さい。
研削液の使用について
基本的に使用可能です。
ゴム及び砥粒の隙間、空間・気孔部に水分・油分が含侵し、色が変わる場合がありますが、ゴムを侵す一部薬品(薬品耐性の項参照)を含有していなければ、製品に影響はありません。
なお浸漬した状態で放置した場合の吸水率は10日間で約5%(純水)程度ですが、吸水による砥石回転バランスの不具合が懸念される為、含侵が想定される環境で長期間使用しない場合、砥石を機器から取り外し、水分を拭き取る等して保管して下さい。
研削液の使用は砥石の滑りを良くする為、加工面の面粗度が細かくなり、寿命が向上する一方で、
研削比※は減少する傾向があります。
- 研削比
-
グラインディングレシオ・Gレシオとも言われ、「砥石に削り取られた加工物の体積」÷「消耗した砥石の体積」 で表されます。
数値が大きい程、少ない消耗で大きく加工している事になり、砥石同士の比較やコスト算出に有効な指標と言えます。
ただし、砥石の寿命や加工量は加工条件(回転速度、切込み深さ、切込み量など)によっても大きく変動します。
その砥石の最適な加工条件を導き出す指標、砥石の比較の際に参考にして下さい。
薬品耐性
ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロールエチレン、酢酸エチル、エーテル類、ケトン類、有機酸(一部)などにゴムボンドは可溶、または吸収し膨張します。
これらを含有する液体、気体に暴露した場合、短時間で砥石が劣化し、砥石が破損する危険があります。
通常のクーラント類に配合されている事はほぼありませんが、部品の洗浄液などにこれらを使用している場合、
砥石が接触したり、蒸気・雰囲気下に暴露される等無い様ご注意下さい。
回転速度について
ゴム砥石は基本的に、ビトリファイド砥石・レジノイド砥石の様な硬い石の砥石と比較し、許容回転速度が遅くなります。
複数種類の砥石を用いる作業では、回転速度の変更・管理にご注意下さい。
トラブルシューティング
ゴム砥石による作業・保管に関する問題には、さまざまな原因が考えられます。
本セクションでは、代表的なトラブル例を挙げ、それぞれの原因と解決策を紹介します。
表面粗さが粗すぎる、傷がつく、対象を削り過ぎてしまう
原因 | 対応 |
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砥石の番手が粗すぎる | 砥石の粒度(粗さ)を細かいものへ変更する |
砥石の回転速度が遅い | 砥石周速度(回転速度)を速くする |
砥石を強く押し当て過ぎている | 砥石押し付け(切込み量)を弱くする |
切れ味が低下する(使っていると削れなくなる)
原因 | 対応 |
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砥石が目詰まりしている | 砥石周速度を遅くする ドレスを行い、目詰まりを取り除く 砥石の品種を変更する |
強い振動が手に伝わる
原因 | 対応 |
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機器が振動している | 加工物の固定方法を確認する |
空転時にうなる様な音がする
原因 | 対応 |
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砥石が振れている | 砥石の固定方法、回転機器の状態、砥石と機器の固定方法を確認する |
砥石がブレている
原因 | 対応 |
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回転速度が速すぎる | 砥石周速度を遅くする ドレスを行い、砥石と機器のバランスを取る |
砥石、加工物に波打つ様な、規則的な模様、送りマーク(ビビリ痕)が出来る
原因 | 対応 |
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機器が振動している | 機器の状態、砥石の状態、それぞれの固定状態を確認する |
砥石が振れている | ドレスを行い、砥石と機器のバランスを取る 砥石の送り速度や切込み量を変更する |
表面粗さが細か過ぎる
原因 | 対応 |
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粒度が細かすぎる | 砥石の番手を粗い物へ変更する |
取りたい傷が取れない
原因 | 対応 |
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回転速度が速い | 回転速度を下げて加工する |
バリが取れない
原因 | 対応 |
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品種の選定が不適当 | 砥石の番手を粗い物へ変更する |
バリに負けて砥石が削れてしまう
原因 | 対応 |
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品種の選定が不適当 | 砥石の種類を、より強く硬い物へ変更する。 |
砥石の消耗が激しい、すぐに無くなってしまう
原因 | 対応 |
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押し付け強さが強い | 砥石を強く押し付けない(ゴム砥石は押し付けても変形して吸収してしまう為、加工能力はそれほど変化しません) |
回転速度が速い | 回転速度を下げる |
対象の面が粗すぎる | 前工程、前加工の見直し。又はゴム砥石の粒度を粗く、研削力の高い物に変更する |
砥石の選定が不適当 | バリが鋭い、面粗さが粗く、ゴム砥石が負けてしまっている場合、UHタイプが適当 |
使っていると削れなく(磨けなく)なってきた
原因 | 対応 |
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目詰まり・目潰れ | ドレスを行い、新しい砥石面を露出させる |
加工物に焼けが発生する、砥石が焦げた(燃えた)
原因 | 対応 |
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砥石が目詰まりしている | ドレスを行い、新しい砥石面を露出させる |
加工条件が厳し過ぎる | 押し付けを弱くする、回転速度を下げる |
ゴムボンドの仕様が不適切 | 砥石の研削力が弱い場合、DFタイプを選定、又は粒度を粗くする。 |
ゴム砥石の破損(ゴム砥石が折れた)
原因 | 対応 |
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押し付け強さが強い | 砥石を強く押し付けない |
軸の破損(軸が折れた、曲がった)
原因 | 対応 |
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回転速度が速い | 回転速度を下げる |
回転バランスの不適当 | 砥石の取り付け方法の再確認、機器及び砥石の振れの再確認、ドレスし回転バランスを取る |
オーバーハング長の不適当 | 砥石の軸は必ず機器の根本まで差し込んで下さい。 オーバーハング長:回転機器のチャック(軸を咥えている部分)から、砥石までの長さ |